左下の大臼歯も限界をむかえて、All-on-4を決意した。1通のSOSメッセージから始まった上下顎All-on-4症例。

ザイゴマ症例
今回は当協会理事 大多和徳人先生が2022年に行った、上下顎All-on-4手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴セット時
 
患者情報
氏名:S.Y 様
63歳(現在65歳)、男性
福岡県在住の患者様

主訴:左下の奥歯のぐらつきと沁みるような痛み

現病歴:2020年8月頃から他院にて定期検診に併せてう蝕治療と歯周病治療を行っていたが症状の改善認めず、数本抜歯。その結果、下顎大臼歯部残存歯が2本となる。
2022年3月残存歯2本の動揺と沁みるような痛みを自覚し、自身の大臼歯部で咬合する事が出来なくなる事を不安視され23日当院へメールにて相談される。3月29日当院初診、歯列不正もあり上下顎All-on-4を希望され4月13日手術となった。

既往歴:Ⅱ型糖尿病、完全右脚ブロック、アレルギー性鼻炎、睡眠時無呼吸症候群、高血圧

常用薬:ジャヌビア錠、ジャディアンス錠、エピナスチン塩酸塩錠、カンデサルタン錠

生活歴:飲酒 缶ビール(350ml)×1本、
    焼酎お湯割りコップ1杯
    喫煙 電子タバコ20本/日
   (紙煙草と合わせて 40年)

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称、右口角の位置が…続きを読む

術前パノラマ画像所見

上顎は全て残存、下顎は残存歯8本…続きを読む

術後パノラマ画像所見

上顎に2本ザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

All-on-4 治療を行う事で、主訴の改善…続きを読む

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称、右口角の位置が左口角の位置より高位にある。鼻唇溝は深く、右側で著明。鼻翼の位置は両側ほぼ対称。
上唇が薄く、下唇が厚い。
笑顔時に上唇から見える上顎前歯部は歯冠部の1/3部が露出
バッカルコリドーは写真では認めるようだが不明瞭。


術前口腔内所見

上下顎とも叢生を認める。上顎正中に対して下顎正中は右側に0.5mm程偏位。上下顎前歯部は唇側傾斜し開口様の所見を呈する、また上下顎前歯部の一部で交叉咬合様の所見を呈する。


術前パノラマ画像所見

上顎は欠損歯を認めず、下顎は6本欠損歯を認める。上下とも多数の処置歯を認める。失活歯も数本認め、Perを認める歯もある。上顎歯槽骨は骨幅を認めるが、両側上顎臼歯相当部は骨幅が前歯部と比較して顕著に狭い所見を呈する。下顎臼歯相当部の下顎体部の歯槽骨は両側とも骨硬化様の所見を呈する。両側下顎頭は変形を認める。


術前CT画像所見

上顎前歯相当部の歯槽骨は十分な骨幅を認める。上顎臼歯部は頬口蓋側的には十分な骨幅を認めるが上下的に十分な骨幅を認めない。 頬骨の骨幅は十分な幅を認める。 両側上顎洞とも軽度粘膜肥厚を認める。


治療計画

両側上顎臼歯歯槽骨に十分なボリュームがなく両側臼歯部のザイゴマインプラント埋入を検討した。両側上顎前歯部は十分な骨幅を認めた事からノーマルインプラント埋入を検討した。下顎も全体的に十分な骨幅があり、歯槽頂部から下顎管までが十分な骨幅を認める為、十分な骨整形を行い後と臼歯部で歯槽堤の高低差が大きいことから、安定度を高めるプラットフォームの設計が必要であると考えた。また、頬骨に十分な厚みがある事からザイゴマインプラント2本を用いる上下顎All-on-4治療 を計画した。手術を円滑なものとする為、術中は静脈内鎮静法下での手術を予定した。


手術所見

2022年4月某日 静脈内鎮静法下に手術施行

術式:静脈内鎮静法下、上下顎All-on-4
(多数歯抜歯術、ザイゴマインプラント埋入術)施行

手術時間:3時間23分


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの52┴25相当部の口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎は正中と一致し叢生や交差咬合の改善を認める。


術後パノラマ画像所見

2本のザイゴマインプラントと6本のノーマルインプラントに8本のアバットメントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。上下とも骨整形を示唆する所見を認める。

術後顔貌所見

顔貌は左右非対称、右口角が左口角よりやや高位の位置にある。人中直下の位置に上顎正中を認める。リップサポートは認める。

試適

2022年7月

CAD/CAMで製作した、プロトタイプを患者の口腔内にて試適、上顎の歯がやや唇側に傾斜傾向との事で。最終補綴物では傾斜を軽度控える事とした。

口腔外所見:口角の位置は左右差は殆ど等位となっている、バッカルコリドーは一部認める。

口腔内所見:上顎と下顎で正中は一致。また叢生と交差咬合の改善を認める。

最終補綴物セット

2022年9月

試適したプロトタイプをもとに、ジルコニアミリングマシンを使用して、モノリシックジルコニアの上部構造を作成しステイニングにて歯肉および歯牙の色を調整。術後5か月に患者様の口腔内にセット。色や歯の形態は患者様のご要望通りに作成した。


最終補綴物セット後のCT画像所見

両側頬骨にそれぞれ1本ずつインプラントが埋入されている、また上顎前歯部と下顎骨に6本のインプラントを認める。インプラント周囲に明らかな異常所見は認めない。両側上顎洞は軽度粘膜肥厚を認めるが、術前と比較して進行を示唆する所見は認めない。また、左右とも十分な含気性を認める。上顎はインプラントの直下、下顎はインプラントの直上に上部構造物様の不透過像を認める。

最終補綴物セット後の顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。

上顎正中は顔貌の正中に一致している。


最終補綴物セット後の口腔内所見

最終補綴物セット後の写真。上下顎のモノリシックジルコニアの上部構造である事が確認出来る、またアクセスホールを計8つ認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎は正中と一致し叢生や交差咬合の改善を認める。


結果

上下顎All-on-4治療 を行う事で、正常な咬合関係と喪失した大臼歯を取り戻す事が出来るようになった。ご本人より、「メールの送信から半年で咬める喜びを実感しています。」とお喜びの声を頂いた。

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