近隣の歯科医院では対応不可能だった。アレルギー体質で歯科治療困難な県外患者に、Zygomaを用いたAll-on-4 治療を行った症例

今回は当協会理事 大多和徳人先生が2023年に行った、上顎ザイゴマインプラント2本ノーマルインプラント2本の手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴物セット時
 
患者情報
氏名:R.U 様
45歳(現在46歳)、女性
福岡県外在住の患者様

主訴:インプラントを入れたい

現病歴:
近医で上顎ブリッジを作成してもらっていたが歯ごとブリッジが割れて脱離した。しかしながら、「ブリッジの再セットは難しく、またインプラント手術もアレルギーリスクが高く骨もない為、手術は出来ない。」と治療を断られた。周辺の歯科医院でも対応困難である事を知り、ネットで上顎の骨がなくてもインプラント手術が可能な歯科医院を探していたところ、おおたわ歯科医院のザイゴマインプラント治療を知った。おおたわ歯科医院を2023年5月に受診し、同年7月に手術施行の運びとなる。

既往歴:アスピリン喘息、多剤薬剤アレルギー(バンコマイシン、テイコプラニン、サイボックス、ピリン系薬剤、プレドニゾロンで喘鳴、アナフィラキシーに準じて対応された過去あり),椎間板ヘルニア、不整脈、副鼻腔炎術後(4回程手術)

常用薬:サルタノール、モンテカルストを服用、シムビコートを吸入、ゾレア皮下注(月に1回)

生活歴:飲酒 週5回瓶ビール5本、ワイン1本、泡盛り1合 喫煙:15本/日 20年

術前顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、…続きを読む

術前パノラマ画像所見

6431┴12457、54321┬123456は…続きを読む

術後パノラマ画像所見

上顎に2本のザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

All-on-4ザイゴマインプラント治療 を行う…続きを読む

術前顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、両側とも明瞭なバッカルコリドーを認める。両側とも鼻唇溝が深い。


術前口腔内所見

上顎正中に対して、下顎正中はやや右側へ偏位。4┴4は破折様所見を呈し、ブリッジも破折。7┴6、76┬7は欠損。5┐は残根。下顎は叢生傾向。


術前パノラマ画像所見

6431┴12457、54321┬123456は残存歯、4┴5、5┐は残根、752┴36、76┬7欠損。両側上顎臼歯相当部ともに上顎骨の異常吸収を認め骨幅が短くなっている。右上顎洞は粘膜肥厚を認める。両側下顎頭の形態に差がある。


術前CT画像所見

両側頬骨はザイゴマインプラント埋入の検討が可能な骨幅を認める。頬骨は左の方が骨幅がある。両側状態は粘膜肥厚を認める。右側で著明。上顎歯槽骨はノーマルインプラントの埋入の検討が可能な骨幅を認める。


アレルギーに対する対策

多剤アレルギーの為、鎮静中に使用予定の麻酔薬、及び術後投薬予定薬に関するプリックテストをご本人のお住まいの近隣大学病院皮膚科へ依頼。投薬予定の抗生剤(サワシリン)にて膨疹を認めた為、過去問題のなかった塩酸ミノサイクリンを投薬する事となった。また、アスピリン喘息の既往がある為、ロキソプロフェンの術後投薬は行わず、カロナール(アセトアミノフェン)も1日量を制限した方がいいとの事だった。 麻酔薬に関しては使用予定のもので、問題となるものはなかった。


治療計画

両側上顎臼歯歯槽骨のボリュームが少なく、歯槽骨の垂直的な幅が少ない。前歯部歯槽骨は垂直的な幅が少しある為、頬骨にザイゴマインプラント2本を用いるAll-on-4治療 を計画した。下顎は5┐の残根を抜歯して、65┐はノーマルインプラントを埋入する計画とした。また、手術を円滑なものとする為、アレルギー反応に気を付けつつ、術中は静脈内鎮静法下での手術を予定した。


手術所見

7月某日 静脈内鎮静法下に手術施行

術式:静脈内鎮静法下、上顎All-on-4、65┐インプラント埋入術
(6431┴12457、5┐抜歯、ノーマルインプラント、ザイゴマインプラント埋入)施行

手術時間:1時間53分
(周術期に明らかなアレルギー反応を示唆する所見は認めなかった)

術後顔貌所見

顔貌は左右対称、リップサポートは認めるが、上唇はやや豊隆したような所見を認め、やや鼻唇溝が浅くなったような所見を呈する。上下顎正中は顔貌の正中に一致している。明瞭なバッカルコリドーを認める。


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの52┴25相当部の口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎の正中は下顎の正中と一致している。65┐はロングヒーリング様の所見を認める。


術後パノラマ画像所見

上顎に2本のザイゴマインプラントと2本のノーマルインプラントにアバットメントとテンポラリーシリンダーが装着されているのを認める。下顎は2本のノーマルインプラントを認める。


術後CT画像所見

両側頬骨にそれぞれ1本ずつ上顎前歯部に1本ずつインプラントが埋入されているのを認める。インプラント周囲に明らかな異常所見は認めない。右上顎洞の粘膜肥厚は軽減したような所見を呈する。左側は術前と比較して進行を示唆する所見は認めない。また、左右とも十分な含気性を認める。右下にインプラント様の所見を呈する。

試適後顔貌所見

顔貌は左右対称、リップサポートは認めるが、上唇はやや豊隆したような所見を呈する。上顎正中は顔貌の正中に一致している。バッカルコリドーは術後より狭小化している。

試適後口腔内所見

2023年9月

CAD/CAMで製作したプロトタイプを患者の口腔内にて試適(2度にわたるTri-inを施行)。患者の希望で、閉口した時の盛り上がり、歯肉の色、上下顎の歯の色(A1)にこだわりあり。また歯の形態は四角めの形態を希望。

口腔内所見:上顎正中に対して下顎正中は一致。65┐相当部にロングアバットメント様所見を認める。

最終補綴物セット

2023年10月

試適したプロトタイプをもとに、ジルコニアミリングマシンを使用して、モノリシックジルコニアの上部構造を作成しステイニングにて歯肉および歯牙の色を調整。術後3か月に患者様の口腔内にセット。色や歯の形態は患者様のご要望通りに作成した。
65┐ノーマルインプラントはモノリシックジルコニアクラウンをセットした。

最終補綴物セット後の顔貌所見

顔貌は左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。

上下顎正中は顔貌の正中に一致している。顔貌写真からでは分かりづらいが、狭小なバッカルコリドーを認める。

最終補綴物セット後口腔内写真

 

口腔内所見:上顎正中に対して下顎正中は一致。上顎はアクセスホールを4つ、65┐はアクセスホールを2つ認め、All-on-4、ノーマルインプラント2本入っている事が確認出来る。

 


結果

All-on-4ザイゴマインプラント治療 を行う事で、近隣の歯科医院では対応困難だった患者の笑顔を取り戻す事が出来た。ご本人からは、お薬が限られていて大変だったけど、しっかりと笑顔が作れるようになってAll-on-4に出会えて良かったとの事だった。

「症例報告Vol.6」への1件のフィードバック

コメントを残す